基礎知識約6分で読めます

系統用蓄電池とは? 仕組みと日本の制度をやさしく解説

電力系統につながる大型の蓄電池は、どのように動き、日本の制度ではどう位置づけられているのか。2024年以降に申込みが急増している背景とあわせて解説します。

この記事のポイント

  • 系統用蓄電池は、電力系統に直接つながる大規模な蓄電設備です。電気が余る時間に充電し、系統が電気を必要とする時間に放電します。
  • 2022年の電気事業法改正により、出力10,000kW(10MW)以上の系統用蓄電池からの放電は「発電事業」として扱われるようになりました。
  • 資源エネルギー庁によると、系統用蓄電池の契約申込みは2025年9月末時点で約24GW。1年前の約3.9倍に増えています。
  • 蓄電池は、需給調整市場・容量市場・長期脱炭素電源オークションに参加できます。
  • 2026年に系統接続のルールが厳しくなり、確実な用地と現実的な系統計画の重要性が増しています。

系統用蓄電池とは

系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続する大規模な蓄電設備のことです。系統に電気が余っているときに充電し、需要が高いときや供給が足りないときに放電します。

海外ではBESS(Battery Energy Storage System)とも呼ばれます。資源エネルギー庁の説明では、太陽光発電所や風力発電所に併設する蓄電池とは異なり、系統用蓄電池は系統そのものにつながっています。特定の発電所の出力ではなく、電力系統全体の需給に合わせて動くのが特徴です。

一般的な蓄電所は、主に4つの設備で構成されます。電気をためる蓄電池モジュール、直流と交流を変換するパワーコンディショナ(PCS)、セルの電圧や温度を監視するバッテリーマネジメントシステム(BMS)、そして蓄電所と系統をつなぐ変圧器・変電設備です。

出力(MW)と容量(MWh)

系統用蓄電池の規模は、2つの数字で表します。出力(MW)は、どれだけの速さで充電・放電できるか。容量(MWh)は、どれだけの電気をためられるかです。容量を出力で割ると、放電を続けられる時間がわかります。たとえば10MW/30MWhの蓄電池は、最大出力で約3時間放電できます。

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のプロジェクトはいまも2時間前後のものが中心ですが、4時間以上のものが増えています。また、2025年に導入された蓄電池の約9割がリン酸鉄リチウム(LFP)電池でした。

日本の電力系統で、蓄電池はどう働くのか

系統用蓄電池は、電気が余る時間から、電気が必要な時間へと電力を移します。日本でわかりやすい例は、昼間に余った太陽光の電気で充電し、太陽光の発電が減る夕方に放電する使い方です。

蓄電池がなければ、系統運用者は太陽光や風力の出力を抑えなければならない場合があります。これが「出力制御」です。資源エネルギー庁の2025年12月の資料によると、出力制御は全国に広がっています。九州エリアの変動再エネの出力制御率は、2023年度が8.3%、2024年度が4.8%でした。電力量にすると、それぞれ約1.29TWh、約0.75TWhにあたります。

この時間帯に充電した蓄電池は、同じ電気を後から届けることができます。応答が非常に速いことも蓄電池の強みで、資源エネルギー庁も供給力や調整力を論じる際にこの点を挙げています。同庁が引用する2022年度の国の委託調査では、主な用途として、インバランスの回避、出力制御の回避、市場を通じた調整力・供給力の提供が挙げられています。

日本の制度では、どう位置づけられているか

現在の日本では、大規模な系統用蓄電池は発電所に近い扱いを受けています。2022年の電気事業法改正で、出力10,000kW以上の系統用蓄電池からの放電が発電事業とされ、発電設備と同様の規律の対象になりました。

蓄電池が参加できる市場の仕組みもいくつかあります。資源エネルギー庁が2024年5月の資料で整理した内容を、以下にまとめます。

仕組み取引するもの蓄電池に関するデータ
需給調整市場送配電事業者が周波数の維持や需給の調整に使う調整力2021年度・2022年度に三次調整力から取引を開始し、その他の商品は2024年度に開始
容量市場将来の供給力(kW)2027年度を実需給年度とする2023年度メインオークションで、蓄電池の応札は8万kW(全体の0.05%)
長期脱炭素電源オークション脱炭素電源への新規投資。原則20年間、固定費水準の容量収入を得られる第1回(2024年1月応札、同年4月結果公表)で、脱炭素電源の募集量400万kWのうち、蓄電池が109.2万kWを落札

長期脱炭素電源オークションで落札した案件は、容量収入を得る代わりに、他の市場で得た収益の約9割を還付します。初期投資の大きい案件について、長期の収入の見通しを立てやすくするための設計です。市場のルールは頻繁に変わるため、細かな条件を判断に使う際は、資源エネルギー庁や電力広域的運営推進機関(OCCTO)の最新の資料をご確認ください。制度の詳細は長期脱炭素電源オークションの解説でも紹介しています。

日本の系統用蓄電池は、どれくらい増えているか

関心は急速に高まっています。資源エネルギー庁によると、2024年3月末時点で系統用蓄電池の接続検討は約40GW、契約申込みは約3.3GWで、2023年5月時点のおよそ3倍でした。

2025年9月末には、全国(沖縄を除く)の契約申込みが約24GWに達しました。1年前の約3.9倍です。同じ期間に、太陽光の申込みは約1.1倍、風力は約0.8倍でした。

ただし、申込みの量がそのまま運転中の設備になるわけではありません。資源エネルギー庁は、接続検討のすべてが系統接続に至るわけではないと指摘しています。同庁がヒアリングした蓄電池事業者からも、契約申込みの多くは実現の見込みが不確かだという声が出ています。

長期的には、資源エネルギー庁の2024年の資料が、2030年までの国内の系統用蓄電池の累積導入量を約14.1〜23.8GWhとする見通しを引用しています。世界全体では、IEAによると2025年に108GWの蓄電池が新たに導入され、2024年より40%増えました。

土地所有者・パートナー・投資家が注目すべきこと

最も注目すべきは、系統への接続です。申込みが急増したことを受けて、日本では2026年に、実際に建設する計画がないまま系統の容量を押さえる申込みを抑えるためのルールが導入されました。

  • 2026年4月から:暫定的な措置として、4月以降に受け付けた系統用蓄電池の契約申込みは、保証金が引き上げられ、系統増強の工事費負担金の分割払いも厳格化されました。
  • 2026年8月1日から:資源エネルギー庁の2026年4月の資料では、1事業者が各送配電エリアで同時に進められる接続検討の件数に上限を設ける措置を、この日から始める予定としていました。
  • 長期的には:資源エネルギー庁は、蓄電池の充電について「ノンファーム型接続」の検討を進めています。混雑時の充電制限を受け入れれば、系統の容量を確保しなくても接続できる可能性がある仕組みで、導入には5〜7年かかると見込まれています。

土地所有者にとっては、系統までの道筋がはっきりしていて、権利関係が確実な土地の価値がこれまで以上に高まっています。系統連系の流れは系統連系の解説記事で詳しく紹介しています。当社の用地取得と系統連系の取り組みやプロジェクトもご覧ください。土地の活用についてはこちらからご相談いただけます。

よくあるご質問

Q系統用蓄電池と家庭用蓄電池は同じものですか?

電池の基本的な仕組みは似ていることがありますが、規模と役割が違います。家庭用蓄電池は、1つの家庭のメーターの内側で使われます。系統用蓄電池は送電網や配電網につながり、地域全体の需給を支えます。

Q系統用蓄電池は発電するのですか?

発電はしません。ほかの場所で発電された電気をため、後から放電します(その際、一部はロスになります)。ただし日本の法律では、出力10,000kW以上の系統用蓄電池からの放電は発電事業として扱われます。

Qどのくらいの時間、放電できますか?

容量(MWh)と出力(MW)の比率によって決まります。IEAによると、プロジェクトの多くは2時間前後ですが、4時間以上の新しいプロジェクトも増えています。

Q系統用蓄電池は安全ですか?

安全性は、設計・監視・運用によって大きく左右されます。一般的な対策には、バッテリーマネジメントシステム、火災の検知と消火設備、設備間の離隔距離の確保、地域の消防との事前の協議などがあります。詳しくは安全性の解説記事と安全・地域共生のページをご覧ください。

出典

  1. IEA「Global Energy Review 2026: Technology: Battery storage」(2026年)
  2. 資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」資料5(2024年5月29日)
  3. 資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」資料1-1(2026年2月9日)
  4. 資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」資料2(2026年4月16日)
  5. 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー出力制御の短期見通し等について」資料1(2025年12月24日)

執筆:株式会社Green Battery 編集部(東京)。本記事は市場や技術の一般的な解説であり、投資・法務・税務に関する助言ではありません。個別のプロジェクトについてはお問い合わせください。

インサイト一覧へ戻る