再エネの出力制御はなぜ起きる? 日本での頻度と最新データ
出力制御の仕組みと、系統運用者が出力を抑える順番、そして最新の公的データから見える実施状況を解説します。
この記事のポイント
- エリア内の電力供給が需要を上回ると見込まれるとき、系統運用者は太陽光や風力の出力を抑えます。需給のバランスが崩れると周波数が乱れ、最悪の場合は大規模な停電につながるためです。
- 「優先給電ルール」では、まず火力の出力を下げ、揚水発電で水をくみ上げ、他エリアへ送電します。太陽光・風力を抑えるのは、バイオマスの後です。
- 出力制御率が最も高いのは九州エリアで、資源エネルギー庁によると2023年度は太陽光・風力の8.3%、2024年度は4.8%でした。
- 2026年3月1日に東京エリアで初めて再エネの出力制御が行われ、全国10エリアのすべてで出力制御が実施されたことになります。
出力制御とは何か、なぜ起きるのか
出力制御とは、系統運用者が発電所に対して出力を下げるよう指示することです。太陽光や風力の場合、主にエリア内の電気が使われる量より多くなるときに行われます。
電気の供給と需要は、常に一致させる必要があります。資源エネルギー庁によると、このバランスが崩れると周波数が乱れ、最悪の場合は大規模な停電につながります。需要は1日のうちに変わり、太陽光や風力の発電量は天候で変わるため、バランスを保つのは簡単ではありません。
資源エネルギー庁は、出力制御を2種類に分けています。1つはエリア全体の需給バランスによるもの、もう1つは個々の送電線や変圧器の容量不足によるものです。この記事では前者を扱います。
電気が余りやすいのは、需要が少ない春や秋の晴れた日です。たとえば2025年5月4日の正午ごろ、九州エリアの太陽光・風力の発電量は需要の149.8%に達しました(資源エネルギー庁が公表した、一般送配電事業者のデータによる)。
出力はどの順番で抑えられるのか
日本では「優先給電ルール」と呼ばれる決まった手順があります。再エネが最初に抑えられるわけではなく、系統運用者は太陽光・風力を抑える前に、ほかの手段を使わなければなりません。
資源エネルギー庁は、その順番を次のようにまとめています。
- 火力発電の出力を下げ、揚水発電所で水をくみ上げて需要をつくる
- 地域間連系線を使って、余った電気を他エリアへ送る
- バイオマス発電の出力を抑える
- 太陽光・風力の出力を抑える
- 最後に、水力・原子力・地熱の出力を下げる
資源エネルギー庁は、水力・原子力・地熱を「長期固定電源」と位置づけています。短時間で細かく出力を調整することが技術的に難しく、一度下げるとすぐには戻せないためです。これらの手順が適切だったかは、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が検証しています。OCCTOは2026年6月の九州エリアに関する報告で、再エネの出力制御の前に、揚水発電と蓄電池の充電が最大限まで計画されていたことを確認しました。
再エネの中での順番も変わりつつあります。今後は、固定価格買取制度(FIT)の電源を、フィード・イン・プレミアム制度(FIP)の電源より先に抑える方針です。資源エネルギー庁は2025年12月、すべての一般送配電事業者が2027年度末までにこの新しい順番での運用を始める見込みだと報告しました。
日本では、どれくらい出力制御が起きているのか
状況はエリアによって大きく異なります。最も多いのは九州エリアで、ほとんど出力制御がないエリアもあります。資源エネルギー庁は出力制御率を、「太陽光・風力の出力制御量」を「出力制御量と発電量の合計」で割って算出しています。
九州エリアの出力制御率は、2023年度が8.3%(約1.29TWh)、2024年度が4.8%(約0.75TWh)でした。下の表は、2024年度の実績と、各一般送配電事業者が示した2026年度の見通しを比べたものです(資源エネルギー庁が2025年12月に公表)。
| エリア | 2024年度の出力制御率(実績) | 2026年度の見通し(推計) |
|---|---|---|
| 九州 | 4.8% | 6.9%(約1.22TWh) |
| 東北 | 1.3% | 4.0%(約0.75TWh) |
| 四国 | 3.2% | 2.9% |
| 北陸 | 0.9% | 2.7% |
| 中国 | 2.3% | 1.8% |
| 北海道 | 0.04% | 1.2% |
| 中部 | 0.3% | 0.2% |
| 関西 | 2.1% | 0.1% |
| 沖縄 | 0.15% | 0.1% |
| 東京 | なし | 0.03% |
見通しはあくまで推計です。資源エネルギー庁は、実際の出力制御は需要や天候、ほかの発電所の運転状況によって変わるとしています。
日数で見ると、別の側面もわかります。OCCTOによると、九州エリアでは2026年1月から3月の間に50日、太陽光・風力の出力制御が行われました(1月12日、2月14日、3月24日)。そのうち49日は、前日の16時に、翌日8時から16時までの制御が指示されています。OCCTOは代表的な5日間を検証し、指示は適切だったと判断しました。
出力制御は広がってもいます。資源エネルギー庁によると、2026年3月1日の11時から16時にかけて、東京エリアで初めて再エネの出力制御が行われました。これで、全国のすべてのエリアで出力制御が実施されたことになります。
出力制御を減らすには
主な手段は、柔軟に運転できる発電所を増やすこと、エリア間のつながりを強くすること、そして余った電気を使ったりためたりする方法を増やすことです。どれか1つだけで出力制御がなくなるわけではありません。
資源エネルギー庁が2026年3月に示した、出力制御の長期見通しの算定方法では、追加の対策をいくつか試算しています。火力やバイオマスの最低出力を下げること、計画中の地域間連系線を整備すること、蓄電池で需要をつくることなどです。蓄電池については、各エリアの最低需要の10%を6時間吸収できる規模を想定しています。
オンライン制御も効果があります。オンラインで指示を受けられる発電所は、手動で調整する発電所より、実際の需給に近いタイミングで制御できます。資源エネルギー庁は2026年3月、九州エリアで出力制御をさらに減らすため、オンライン化された特別高圧の発電所への指示を、より実需給に近いタイミングで出すことを提案しました。
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よくあるご質問
Q出力制御された分の電気に、補償はありますか?
基本的にはありません。資源エネルギー庁によると、2021年4月以降、すべてのエリアで新たに接続する発電所には「無制限・無補償」のルールが適用されています。以前からのFIT案件の中には、年間30日など上限日数までは無補償で出力制御を受け入れるものもあります。
Q出力制御と系統の混雑は同じものですか?
違います。どちらも出力を減らしますが、需給バランスによる出力制御は、エリア全体で電気が多すぎるときに行われます。混雑による制限は、特定の送電線や変圧器の容量がいっぱいになったときに行われます。
Q出力制御は春にしか起きないのですか?
需要が少ない春と秋に多いのは確かですが、ほかの季節にも起きます。九州エリアでは2026年1月と2月に計26日の出力制御が行われ、資源エネルギー庁は2025年度の冬に、天候に恵まれたことから全国の出力制御量が増えたと報告しています。
Q出力制御が本当に必要だったかは、誰が確認しているのですか?
OCCTOが、出力制御の指示の後に検証しています。需要の予測、優先給電ルールの手順が先に行われたか、それでも出力制御が必要だったかを確認し、その結果をウェブサイトで公表しています。
出典
- 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー出力制御の短期見通し等について」資料1(2025年12月24日)
- 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」資料1(2026年3月16日)
- 資源エネルギー庁「出力制御について」なるほど!グリッド(2026年9月閲覧)
- 電力広域的運営推進機関 九州エリアにおける自然変動電源の出力抑制に関する検証結果(2026年1月~3月分、2026年6月3日公表)
執筆:株式会社Green Battery 編集部(東京)。本記事は市場や技術の一般的な解説であり、投資・法務・税務に関する助言ではありません。個別のプロジェクトについてはお問い合わせください。