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系統用蓄電池は安全? 日本の消防法と電気事業法のルール

蓄電所で火災が起きる可能性はゼロではありません。設計、日本の法令、国際規格がどのように組み合わさってリスクを下げ、被害を抑えているのかを解説します。

この記事のポイント

  • リスクがまったくない蓄電所はありません。しかし、設計、監視、規格、消防との事前の協議によって、火災を起きにくくし、起きた場合も広がりにくくできます。
  • 消防法に基づくルールでは、2024年1月1日から蓄電池設備を蓄電量(kWh)で区分しています。20kWhを超える設備は、所轄の消防署への届出が必要です。
  • 大規模な蓄電所は、電気事業法上の「蓄電所」としても規制され、保安規程の作成や電気主任技術者の選任が求められます。
  • IEC 62933-5-2やUL 9540Aなどの国際規格が、安全要件を定め、蓄電池システム内での火災の広がり方を試験しています。

蓄電所で火災は起きるのか

火災が起きる可能性はあります。系統用蓄電池の多くはリチウムイオン電池を使っており、消防庁は、リチウムイオン電池のセルには可燃性の電解液が含まれていると指摘しています。異常が起きると、セルからガスや電解液が漏れ、発火することがあります。

最も警戒すべきは「熱暴走」です。1つのセルが過熱すると隣のセルを温め、その熱がモジュール全体に広がることがあります。そのため安全対策は、異常を起こさないこと、そして万一起きても広げないことの2つを目標にしています。

消防庁が2023年1月にまとめた資料では、2012年から2020年に把握された定置用蓄電池と無停電電源装置の火災を調べています。火災は18件で、そのうちリチウムイオン電池は5件でした。死傷者はなく、ほとんどがごく小規模なものでした。原因として挙げられたのは、経年劣化、過充電、保守の不備、製造上の欠陥です。このデータは系統用に限らない定置用蓄電池全般のものなので、リスクの大きさを測る数字ではなく、原因を知る手がかりとして見るのが適切です。

蓄電池に適用される消防のルール

日本の蓄電池設備は、消防法に基づく火災予防のルールの対象です。具体的な基準は、国の省令と消防庁の火災予防条例(例)をもとに、各市町村の火災予防条例で定められています。

消防庁は2023年5月31日にこのルールを改正し、蓄電池に関する規定は2024年1月1日に施行されました。以前のルールは主に鉛蓄電池を想定し、「アンペアアワー・セル」という単位を使っていました。新しいルールでは、火災の危険性は蓄電池にためられるエネルギーの量で決まるという考え方から、キロワットアワー(kWh)を使っています。

蓄電量消防法令上の安全基準消防署への届出
10kWh以下対象外不要
10kWh超20kWh以下対象(火災予防上の基準に適合する設備を除く)不要
20kWh超対象必要

系統用の蓄電所は数千kWh以上をためるため、表の一番下の区分に当たります。中段の区分について消防庁は、過充電の防止、外部短絡の防止、内部短絡やシステム内での延焼の防止という3つの保護を備えた規格を認めています。屋外に設置する蓄電池設備は、原則として建物から3m以上離す必要があります。ただし、IEC 62933-5-2など延焼防止の規格に適合する設備は、この離隔距離が免除されることがあります。条例は地域ごとに定められているため、詳細は必ず所轄の消防署に確認してください。

電気事業法による蓄電所の規制

大規模な蓄電所は、電気事業法上の電気工作物としても規制されます。電気設備の技術基準では、「蓄電所」を、単独で系統に接続し、電気をためて同じ電圧・周波数で送り出す施設と定義しています。発電所や工場に付属する蓄電池は、蓄電所には含まれません。

経済産業省によると、蓄電所には、技術基準への適合の維持、電気主任技術者の選任、保安規程の作成と届出が求められます。出力10,000kW以上、または容量80,000kWh以上の蓄電所は、工事計画の届出も必要です。また2025年11月20日からは、20kWhを超える電力貯蔵装置の事故が、電気関係報告規則に基づく報告の対象になりました。これらの義務は消防のルールに代わるものではなく、両方が同時に適用されます。

蓄電池に関わる国際規格

国際規格は、設計者が共通の物差しで安全性を判断するためのものです。日本の消防のルールも、その一部を直接参照しています。

  • IEC 62933-5-2:国際電気標準会議(IEC)による、系統に接続する蓄電システムの安全要件の規格です。2025年12月に発行された版は、設計から使用終了までのライフサイクル全体を対象としています。
  • UL 9540A:熱暴走による火災の広がりを調べる試験方法です。セル、モジュール、ユニット、設置状態の各段階で試験を行います。その結果は、米国防火協会(NFPA)のNFPA 855などの基準への適合を示す根拠として使われます。

しっかり運営される蓄電所の多層的な安全対策

良い蓄電所は、いくつもの対策を重ね、1つの不具合だけで結果が決まらないようにしています。下の表は、代表的な対策と、ここまでに紹介したルールとの関係をまとめたものです。

対策役割関係するルール・規格
バッテリーマネジメントシステム(BMS)セルの電圧と温度を監視し、異常のあるモジュールを切り離す消防庁が認める規格の過充電防止
セル・ユニット間の離隔セル同士、ユニット同士、周囲の建物への熱の広がりを遅らせる建物からの3mの離隔、IEC 62933-5-2、UL 9540A試験
検知と消火熱・煙・ガスを検知し、筐体内で消火設備を作動させる火災予防条例、UL 9540Aの設置状態での試験
消防との連携運転開始前に、配置図や緊急時の計画を共有する20kWhを超える設備の届出
24時間の遠隔監視警報を出し、出力を下げたり停止したりできる電気事業法に基づく保安規程

Green Batteryでは、バッテリーマネジメントシステムがセルを24時間監視し、筐体には熱・煙・ガスの検知装置と、それに連動する自動消火設備を備えています。運転開始前には、配置図と緊急時の計画を地域の消防に提出します。あわせて、離隔距離や敷地境界からの後退距離の確保、低騒音の設備の採用、住民の皆さまとの早い段階からの対話にも取り組んでいます。詳しくは安全・地域共生のページや、系統用蓄電池の基礎知識をご覧ください。

よくあるご質問

Q蓄電池のユニットが過熱したら、どうなりますか?

監視システムが警報を出し、運転者が出力を下げたり、システムを停止したりできます。火災が起きた場合も、筐体内の検知・消火設備で内部にとどめることを目指します。消防はあらかじめ配置図と緊急時の計画を把握しています。

Q蓄電所の音はうるさくないですか?

冷却ファンやパワーコンディショナからは、ある程度の音が出ます。低騒音の機器を選ぶ、住宅と反対の向きに設置する、防音壁を設けるといった対策が可能です。Green Batteryは、地域の昼間・夜間の騒音の基準を守るよう蓄電所を設計しています。

Q地域の消防は、蓄電所のことを把握していますか?

火災予防条例により、20kWhを超える蓄電池設備は消防署への届出が必要で、系統用の蓄電所はそれよりはるかに大きな規模です。Green Batteryは、運転開始前に地域の消防と計画を共有しています。

Q近くで計画されている蓄電所について、誰に聞けばよいですか?

まずは事業者と、お住まいの自治体にお問い合わせください。当社のプロジェクトについては、住民の皆さま、自治体、消防の方からのお問い合わせをお受けしています。

出典

  1. 消防庁「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令(案)等に対する意見公募の結果及び改正省令等の公布」(2023年5月31日)
  2. 消防庁予防課「改正火災予防条例(例)の運用等について(通知)」消防予第332号(2023年5月31日)
  3. 消防庁予防課「蓄電池設備の規制の見直しイメージ」資料1(2023年1月)
  4. e-Gov法令検索「電気事業法施行規則」(2026年9月閲覧)
  5. 経済産業省「電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き」(2026年9月閲覧)
  6. IEC「IEC 62933-5-2:2025 Electrical energy storage (EES) systems, Part 5-2: Safety requirements for grid-integrated EES systems, Electrochemical-based systems」(2025年12月)
  7. UL Solutions「UL 9540A Test Method for Battery Energy Storage Systems (BESS)」(2026年9月閲覧)

執筆:株式会社Green Battery 編集部(東京)。本記事は市場や技術の一般的な解説であり、投資・法務・税務に関する助言ではありません。個別のプロジェクトについてはお問い合わせください。

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